砂上の城〜秘密を抱えた少年の数奇な運命
ミレットからの誘いを受けると、アベルはカインを見た。
カインは視線を受けて静かにうなずく。

「ではあちらで。甘い菓子がありますよ」

正妃の立場を考えれば国交のためにもこれ以上ブリュオー王国に悪い印象を残すわけにはいかない。
国王ディアルドにそんな気遣いを求めても無理だ。となれば、必然的にアベルの役回りになる。
幸い、アベルは女性の扱いに長けている。ミレットを上手くもてなすに違いない。


カインがうなずいただけで、アベルには自分に課せられた役回りが分かった。


「…いつも影のようにアルベルト殿下のお側に控えていて、ほとんど表に出てこないオルディン公爵。
なるほど、殿下の腹心というより軍師といったところか」

ロシェ侯爵の独り言をカインの耳はしっかりと拾った。

戦場でもあるまいし、軍師だなどと言われてもピンとこないが。

ーーある意味、彼にとってここは戦場なのかもな。

ブリュオー王国と、形だけの正妃によって形だけの平和な国交を続けようとするフォトキナ王国。
ブリュオーは乗馬と狩猟が好きな民族。好戦的で戦闘が価値観の基本となる根っからの戦闘民族だ。隙あらば戦を仕掛けてくるかもしれない。
それだけは避けたい。

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