幸せにしたいのは君だけ
言葉にならない、あふれんばかりの切なさに心が揺れて、泣きそうになってしまう。

同時に腹立たしいような気持ちさえ感じてしまう。


伝えればいいのに、自分の想いを。

伝えたらよかったのに、自分の気持ちを。


きっと、新郎より彼のほうが澪さんについてよく知っているはずだし、一緒に過ごした時間だって長いはずだ。

なのに、なぜ、行動しないの?


憧れの先輩の晴れ姿よりも、彼が気になってしまって、正直その日は“婚活”なんてものは考える余裕がなかった。

こんなのは本当に私らしくない。


友人でもない人の恋愛に口を出すなんて無粋な真似、これまでにした経験はないのに。

人は人、私は私、というスタンスをずっと貫いてきたのに。


やってきた電車に乗りこむ。

車窓を流れる景色をぼんやり眺めた。


佐久間さんはまたすぐにアメリカに戻るだろうし、きっともう会う機会はないはずだ。

深く考えるのはやめよう。


小さく首を横に振って、その日は無理やり自分を納得させて帰路に就いた。

頭の片隅で親友に、実は今日噂のイケメンに遭遇していたと伝えなければとメモをして。
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