幸せにしたいのは君だけ
「彼と約束でもしてた?」


益岡さんの問いかけに、首を横に振る。


「いえ、まったく……なんで、ここに……」


――どうして今、ここに圭太さんがいるの?


「だったら偶然かな? 二度も邪魔されるなんて、やっぱり三浦さんとは縁がないと思って、いい加減諦めるよ」


軽い口調でそう言って、益岡さんは肩を竦める。

この距離では圭太さんに話している内容は聞こえているかもしれない。


「じゃあ、彼によろしく。本当にありがとう」


そう言って、颯爽と去っていく益岡さんに向き直り、小さく頭を下げた。


再び振り返る。

カツン、とアスファルトに圭太さんの革靴の音が響く。

なぜかその場から動けなかった。


いつ見てもこの人のスーツ姿は悔しいくらいにカッコいい。

益岡さんと基本的な装いはそんなに変わらないのに、どうしてこの人だけがこんなにも私の心を乱すのだろう。

ドキドキと心臓が早鐘をうつ。


「……久しぶり」

「……帰国、してたの?」

「午前中に着いたところ。一旦実家に戻って、こっちに来た。打ち合わせがあるから」


目の前にやってきた圭太さんの淡々とした声に、少し違和感を覚える。


もしかして……怒ってる?
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