幸せにしたいのは君だけ
「益岡さんは応接にいらしてて、落とし物をしたの。たまたま備品点検をしていた私が気づいたから追いかけて渡した、ただそれだけよ。なんで疑うの?」

「恋人がほかの男とふたりでいたら、気になるだろ」

「ふたりでって……この通りで少し話していただけでしょ?」

「俺のことは避けていたのにか?」


やはり私が避けていたと、気づいていたんだ。

その事実が嬉しくて、悲しい。


矛盾しているかもしれないけれど、避けているとわかっていたならその理由を尋ねてほしかった。

あんな物分かりのいい返信なんてほしくなかった。


ひとりで考えたい、距離を置きたいと言い出したのは私だけど、それでも引き留めて、強引にでも向き合う素振りを見せてほしかった。


……気にかけてほしかった。


支離滅裂な考え方だとわかっている。

無茶苦茶だとワガママだと理解している。

それでも関係を修復したいのだという意思表示をしてほしかった。


でも結局彼は、冷静に割り切っていた。

今日、ここで会えたのはきっと、偶然が幾つも重なり合ったから。

わざわざ私に会いに来たわけじゃない。


「……避けてるってわかっていたなら、なんでなにも言わなかったの……?」

「今、言ってるだろ」

「違う。私がメールを送ってから、ずいぶん経つよね? でもその間、圭太さんは私に連絡をとろうとしなかったでしょ」

「それは佳奈もだろ」
 
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