幸せにしたいのは君だけ
「いや、俺の恋は前途多難だなと思って。なあ、この間の話、覚えてるか?」

「恋人探し、ですか?」

「そうそれ、本気で考えてみないか?」

「佐久間さんには必要ないのでは? 引く手あまたですよね」

「必要だから誘ってる」

「遠慮します」

「俺は君が気に入ってる。君と恋人探しをしたい。もちろん、君にもきちんとアドバイスする。自分で言うのもなんだけど俺、人を見る目あるよ?」


わざと“君”を強調してくる。

強い視線に射抜かれる。


「……具体的にどうするんですか?」

「そうだな……その話もしたいから、とりあえず場所を移ろうか? ここじゃさすがに目立つから」


そう言われて、店の真ん前でずっと話していた事実に気がつく。

しかも私はなんと、抱きしめられたままだ。


「は、離してください!」

「今さら?」


やっと私の身体を離し、クスクスと甘い笑い声を漏らす佐久間さんに厳しい眼差しを向ける。

それでもまったく動じないこの人が腹立たしい。

拳ひとつ分しかない近い距離で視線を合わせてくる。


「でも、こんな時間だし、君を送りながら話そうか」

「ひとりで帰れます」

「その主張は残念ながら聞けない。女の子をひとりで帰せるわけないだろ」


“女の子”という単語がくすぐったい。

そんな言われ方をしたのはいつぶりだろう?
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