幸せにしたいのは君だけ
「私もそうだけど、婚活や合コンの時って、自分のいい面ばかり見せちゃうじゃない? 自分のマイナス面もしっかり見せられる相手のほうが、肩ひじ張らずにいられるなって思って」

「ずっと一緒にいるのに、いつも百点満点な自分ではいられないもんね」

「そう。それに常に完璧さを求められても困るでしょ」

「自然体の自分を受け入れてくれる人、受け入れられる人かあ」

「佳奈はいいじゃない。佐久間さんがいるんだから」

「そういう意味で言ったんじゃないってば」


恥ずかしくなって、目の前の牛肉のパイ包みを口に運ぶ。

料理はどれも絶品と評判の店だけあって、本当に美味しい。

揶揄うような親友の視線から逃れるように、窓の外を見つめる。


その時、視界に一組の男女が目に入った。

店がある場所から反対側の通りを歩いている。

男性は女性の陰で見えにくいが、副社長だろうか。


「……あれ?」

「なに、美味しくないの?」

「ううん、ちょっと気になった人が……」

「佐久間さんがいるのに浮気?」

「違うから。澪さんがいたような気がして……」

「そうなの? どこ?」


千埜が身を乗り出すようにして窓の外に視線を移す。

私はふたりが歩いている場所を伝える。
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