幸せにしたいのは君だけ
「……女性が佳奈の先輩かどうかは、よくわからないけど……」


私よりも格段に視力がいい千埜は、すぐにふたりを見つけたようだ。

ただ彼女は澪さんと直接会ったことはない。

結婚式の写真を見せたくらいだから、顔がわからないのは当然だろう。


「男性は副社長じゃないわね……どちらかというと……」


そう言って親友は険しい表情を浮かべた。


「なに?」

「……佐久間さんに似ている気がする」


歯切れの悪い口調で告げる親友に、ひゅっと息を呑む。


「え……?」


ノロノロと頭を動かして、窓の外を食い入るように見つめる。

すでにふたりの姿は遠くなり、私には判別ができない。


ドクンドクン、と心臓が嫌なリズムを刻みだす。

心の奥が急速に冷えていく。

店内は快適な温度に保たれているのに、指先が冷たくなっていく。
< 91 / 210 >

この作品をシェア

pagetop