幸せにしたいのは君だけ
そのまま年末になり、滞りなく仕事納めを迎えた。

マニュアル作りは完成し、総務事務も少しずつ理解できるようになった。

今までの業務とはまた違った魅力と難しさがあり、やりがいも感じていた。


課長には、一月中には異動になると思う、と言われた。

その日までに私は早苗ちゃんにきちんと仕事を引き継がなくてはいけない。

圭太さんに話していた、事務の効率化会議も、思った以上に周囲からの賛同を得られていた。

主に事務に携わる各課の社員からは、好意的な意見をもらっていた。

もちろん課長も賛成してくれていて、二月頃までに一度会議を開催しようと話がまとまりつつあった。


仕事は順調だ。

それなのに、あの日の光景が私の心に小さな影を落とす。


圭太さんは今までと変わりなく、こまめに電話もメールもメッセージもくれている。

気になるなら、悩まずに簡単に尋ねればいいだけなのに、どうしてかそれは憚られた。


ただ帰国を教えてもらえなかったからではない。

一緒に歩いていた女性が澪さんかもしれないという事実が私に二の足を踏ませる。


澪さんが浮気をしているとかそんな馬鹿げた考えを抱いているわけではない。

あれだけ副社長を一途に想っている澪さんを、疑う気持ちは微塵もない。
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