紡ぐべき糸

「何かさ 逃げてばかりいて。誰かが 気付いてくれるのを 待っていて。そんな自分が 嫌になったの。」

啓子が言うと、
 

「私も。ずっとそうだけど。このまま 年取っていくのかなって いつも思う。」

と美穂は言って 寂しそうに笑った。
 

「私達 ずっと臆病過ぎたよね。何が 怖かったんだろう。」

と言う啓子に、

「全部、怖いよ。」

と美穂は笑う。
 

「私 横山さんにフラれて。すごく カッコ悪い自分を 見せて。それ以上 怖いもの ないような気がしたの。」

バレンタインデーを 思い出すと 啓子は 情けなくて 泣きそうになる。
 

「啓ちゃんが 前向きになれたの 横山さんのおかげだね。」

と美穂に言われて 啓子は頷く。

フラれても 聡を 思う気持ちは 変わらないから。
 


「私 フラれてからの方が 横山さんのこと 好きだもの。」

と啓子が言うと 美穂は
 

「いいなあ。私も 恋がしたい。」


と笑った。
 
 



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