嘘つきは恋人のはじまり。


 
 「脱がす必要…ん」


あるのか。と言いかけて言葉を吸い取られる。九条さんはキスをしながら器用にブラのホックを外した。


九条さんの大きな手が身体を撫でる。その動きに神経を尖らせていると唇が離れた。


「…こっち見て」


荒い息を隠すことなく懇願の目がわたしに乞う。


「俺だけ見て」


またキスが始まる。今度は唇だけじゃない。鎖骨から胸へと唇が落とされる。まるで壊れ物に触れるような手つきで膨らみを解され、唇は主張し始めた先端を啄み、堪えきれなくてつい漏れてしまった声を、彼は「可愛い」と笑う。


「もっと感じればいい」


拷問だ。確かに「キス」だけかもしれない。だけど身体全身を丁寧に愛撫され、大切に大切に扱われた身体はもはや“抵抗”の二文字はなくなり。


ーーもっとして欲しい



欲が疼く。喉が乾く。
身体が求めている。


だけど言えなくて。

それなのに脳を絆され蕩けさせられた感覚は甘さを求め渇きを潤すことに必死になっていた。



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