恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】

「相澤はこっちだから。着いてきて」
「え?こっちって…」

受付もしていないのに良いんだろうかと内心で焦りながら、とりあえず前をツカツカと歩く砂川君に着いて行く。

医院内の通路を歩く途中で、もしかしてと思った予想は当たっていて、辿り着いたのは私が昨日お世話になった病室だった。

「ここ、今は診察で使ってない部屋なんだ。相澤はそこ座って。近いならベッドでも良い」

そう言って砂川君がカルテと挟んだバインダーとペンを持ってデスクチェアに腰掛ける。
私は、ベッドではなく砂川君と向かい合う形で置かれた患者様の椅子に腰掛けた。

一緒の車に二人きりで乗れたのだからこの位の距離はまだ怖くない。昨日のように接近されると、思わず頭が真っ白になって悲鳴をあげてしまったが。

「昨日も言ったように、心的外傷後ストレス障害の治療は楽じゃない。強い精神的苦痛を伴うし、個人差はあるが何より終結するまでに時間がかかる」

「…うん。
でも、それを頑張ったら治るんだよね?」
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