恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】
私がそう制止しようと海里の袖を引いたのと、海里が沙和の手を取ったのはほぼ同時だった。
手を捕まれた沙和が、そのままカクンと腰を抜かす。
「沙和っ」
「相澤さん、大丈夫!?」
沙和が腰を抜かしてその場に座りこみ、今日は元々悪かった顔色から更に血の気が引いていく。
沙和を心配して背をかがめて視線をあわせようとしたを海里を突き飛ばす勢いで沙和から離した。
そしてエレベーターのボタンを押す。
「海里、悪いけど次の階で降りて…あぁ、いや、やっぱり私達が降りるわ」
海里以外の別の男性がこのエレベーターに乗ってくる事もあり得る。
最近の沙和ならそのレベルの事は耐えられるようになっていた筈だが、今は沙和の体調が違う。
「ごめん相澤さん、美崎…」
私の言葉を思い出したのか、そう反省した様子の海里の言葉と、エレベーターが停止する無機質な音が被る。