恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】


そんな砂川君の言葉に、沙和がほんの僅かに顎を内に寄せて頷く。

『ありがとう』

通話越しには沙和が頷いたかどうかなんて分からない筈なのに、まるで沙和の様子が見えているかのようなタイミングで砂川君がそう返す。

沙和の事を患者としてとても良く理解した上での憶測だっだのだろうが、それでも驚かずにはいられなかった。

『相澤は今会社にいて、側についていてくれる人もいる。すごく安全な状況にいるんだ。
過去の記憶は今の相澤に危害を加えないし、どれだけ思い出しても何も危険じゃない』

沙和を安心させるように優しく、けれどきちんと耳に届くような力強い声で語られる言葉に、沙和の震えが少しずつ収まっていくのが分かった。

『大丈夫だから、安心して。落ち着いて、ゆっくり息を吐いて』

砂川君の言葉にならい、沙和が苦しそうに顔を歪めながらもゆっくりと息を吐く。

『吸うよりも、息を吐く事を意識して。
1,2、3,4…、はい、今度は吸っていいよ』

「はぁ…っ…」

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