恋の忘れ方、怖がりな君の愛し方。【番外編追加】
「り、理由は無いよ。今日は出来そうな気がしただけ」
やっと口を開いたかと思えばこれだった。
『へぇ』
砂川君が一拍おいて、含みを持った声でそう返す。
沙和は嘘が上手くない。何か理由があるのだろうという事は私にでさえバレバレだった。
『前にも言ったけど、無理をするのは良くないからな。焦らずに、ゆっくり治していけばいい』
砂川君も勿論沙和の嘘に気づいていたのだろうが、少しだけ低い声でそう注意しただけで、それ以上沙和を問い詰めはしなかった。
*
「…綾香、本当にありがとう」
砂川先生との通話を終えると、沙和は改まったように私に向き直り、そう言って頭を下げた。