虹色アゲハ
「どう?
名義の女の事、何かわかった?」

その日揚羽は倫太郎に電話して、事の経過を確認していた。

2対2同伴の際、久保井にもウイルス付きの同伴場所を柑愛経由で送っていたが…
それは完全に詐欺用携帯で、得られたのは位置情報くらいだった。


『あぁ、まだ調査中だけど…
その女は詐欺師だった』

「詐欺師?
って事は、久保井のバディ?」

どうして自分じゃ駄目だったんだろう…
そんなくだらない考えが、ふいに脳裏をよぎった。

信頼されるバディ(その女)と騙された自分は、一体何が違ったんだろうと。


『…おい、聞いてんのか?』

「あぁごめん、なんだった?」

『…や、引き続き調べとくっつったんだけど。
返事ねぇから…』

「ごめんごめん、こっちも他の情報集めてみるわ」

『…ん、じゃあな』
揚羽の様子を心配しながらも…
相変わらず何も出来ずに切ろうとすると。

「待って倫太郎っ、お腹空いてない?
何か作ってあげようか?」
思わず引き止めてしまう揚羽。

『は?
まぁ作ってくれんなら、喜んで食うけど…』
本当は食べたばかりだったが、そんな嬉しい申し出を断るはずがなかった。
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