虹色アゲハ
自分の女を守ってもらうためなのは、さる事ながら。
仁希が初めて自分を必要としてくれた存在だったため、必死に役目を果たそうとしていたのだ。

だけどいつしか…
同じく自分を必要として、頼ってくれて。
理解してくれて心配してくれて心を許してくれた望を、愛してしまったのだった。


「それから…
ようやく手筈が整った仁希さんは、アンタの指名客に近づいたんだ。
当然、店で再会したのは偶然じゃない」

確かに望も、偶然だと思えないふしはあった。
なぜなら2人が出会ったのは他県で、飲み屋も星の数ほどあるからだ。

とはいえ望自身が、身バレを防ぐために転々としていたため…
他の都道府県で会っても、そんなに不思議ではなく。
なにより、ずっとそんな日を待ち望んでいたため…
ついにこの日が、といった気持ちの方が強かったのだ。


ーーー
ーー


「マジで聞いてねぇし」

仁希が店に来ていた事を望から聞かされて、怒る倫太郎。

「悪い悪い、サプライズしようかなって」

「ふざけんなよ、危うくアイツの前で口滑らすとこだったし」

ー「はあ!?聞いてねぇしっ」
「そりゃ、言ってないからね」ー
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