契約結婚!一発逆転マニュアル♡
自分を見ているであろうが、あまりにも目が虚ろで焦点が合っていない。

いったいこの子に何があったと言うのか。

シェフは入店時と打って変わって異様な雰囲気を醸し出している依舞稀を、そのままにしておく事ができなかった。

「電話があって……。警察から……。意味がわからないの……。事故で……死んだって言うの……。そんなことあるはずないのに……」

ははっ……と乾いた笑みを浮かべた依舞稀を見れば、何があったか想像はつく。

掛ける言葉も見つからず、たった一言「またおいで」と絞り出すようにそう言った。

依舞稀は表情を変えることなく返事もせずに、フラフラと店を出て行った。
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