契約結婚！一発逆転マニュアル♡
葬儀は滞りなく終わり、いよいよ出棺の時間となった。

これが本当の別れである実感が湧いてくると、流れ出した涙を止める事ができなくなってしまった。

あんなに優しくて素敵な両親の人生が、こんな形で終わりを迎えてしまうなんて。

今までの思い出が走馬灯のように脳裏に浮かんでは消え、依舞稀は口元を覆って膝から崩れ落ちた。

ギュッと目を閉じ背を丸め、泣き叫びそうになったとき、誰かが依舞稀の腕を力強く掴む。

力任せに引き上げられ、驚きのあまりに止まってしまった涙に濡れた瞳を見開き、腕の主を見上げた。

そこには長身で驚くほどに整った顔があった。

シンプルな礼服に身を包んだ人物は、こんなときにもかかわらず、恐ろしいほどのイケメンオーラを放っている。

こんな人物はそうそういないだろう。

「副……社長？」

依舞稀を引き上げたのは、桐ケ谷遥翔だった。

どうしてここに、と一瞬思ったが、いくら新入社員とはいえ、自分の会社の従業員の両親が一度に亡くなってしまったのだ。

会社の副社長が弔問に来るのは何の不思議もない。

理屈ではそうであるが、入社式に一度見ただけの人物である。

依舞稀の驚きといったらなかった。

「膝をつくな」

その副社長である遥翔が、依舞稀を真っ直ぐに見つめてそう言った。

「一度膝をついてしまったら、そう簡単に自分で立ち上がれなくなるぞ」

両親を一度に亡くし、悲しみに打ちひしがれている依舞稀に投げかけられた視線は、真っ直ぐで強い力を秘めていた。
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