契約結婚!一発逆転マニュアル♡
確かに社長就任のために仕方なく結婚を考えた。

依舞稀と出会う前までは、とにかく誰でもいいから適当な女を八神に見つけてもらい、結婚するしかないと考えたこともあった。

社長に就任し、時期が来たら離婚してしまえばいい。

今思えば軽薄すぎて虫唾が走るほど、身勝手なことを考えていたのだ。

しかし依舞稀と出会って遥翔の考えは大きく変わった。

依舞稀の素性が気になり、依舞稀のことしか考えなくなり、契約結婚の話を持ち掛けて以来、本気で依舞稀との結婚を望むようになってしまった。

いつの間にか社長就任であるとか契約結婚であるとか、そんなことはどうでもよくなるほどに依舞稀を求めたのだから。

「社長に就任するにあたって、しっかりと身を固め、ホテル業界においてどれだけ人を大切に思うことが必要なのかを知ってもらうために出した条件だった」

まともに人を愛したことがない遥翔が、ホテルの醍醐味である『お客様を幸せにする』という心構えなどわかるはずもない。

そう考えた誠之助は、遥翔に対し無謀ともいえる条件を提示したのだ。

しかし誠之助とて、大切な跡取り息子の妻になる女性が誰でもいいなどと思っていたわけではない。

「遥翔は依舞稀さんとなぜ結婚しようと思ったんだ?」

「なぜって……」

「本当に二人は愛し合って結婚したのか?依舞稀さんには失礼だが、社長就任のために結婚したんじゃないのか?」

誠之助の言葉に、遥翔と依舞稀は言葉を詰まらせてしまった。
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