契約結婚！一発逆転マニュアル♡
「あんたいったい誰よ……」

璃世からそう言われ、依舞稀は自分がどれほど酷い顔をしているのかに気が付いた。

「凄いクマよ？昨日は寝てないんじゃない？」

「夜更かしして何やってたのよ」

璃世はコーヒー、花音はミントタブレットを依舞稀に差し出してくれた。

「ありがと……」

さすがに眠れなかった原因を話すわけにはいかない。

依舞稀は曖昧な返事と笑顔で上手く切り抜ける。

「昨日は忙しくて聞けなかったけど、副社長の話って何だったの？」

花音がいきなりそんなことを言うものだから、昨日の遥翔との新契約が思い出されて、依舞稀は顔が引き攣った。

「突然八神さんが迎えに来るなんてよっぽどだったんじゃない？」

璃世は以前から遥翔と八神のペアを『神々しい』と崇めている。

昨日のことがバレてしまったらどうなるかと思うと、怖くて絶対に話せない。

けれど璃世の質問に、どのように答えていいのかわからない。

笑顔で誤魔化すのにも限界を感じていると、「はい、これ」と誰かの救いの手が差し出された。

「美玖ちゃん」

スティック状になった某メーカーの新作コンシーラーを依舞稀に差し出した美玖は。

「依舞稀さんの強烈なクマも簡単に隠せちゃいます」

そう言ってハンドミラーとのセットで依舞稀に手渡してくれた。

「どんな話があったかは知りませんけど、２５の女性が目の下にクマ作ってるなんて有り得ません」

美玖は強引に依舞稀を椅子から立ち上がらせると、強引にパウダールームに行けと促した。
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