契約結婚!一発逆転マニュアル♡
まじまじと鏡に映る自分の顔を見て、大きな溜め息が出た。

朝化粧するときにはここまで凄いとは思わなかったが、まるで茶色のアイシャドウを塗ったかのように、見事なクマが出現している。

美玖から借りたコンシーラーを塗り上からパウダーで押さえれば、すっかりいつもの依舞稀に戻った。

それでもいつものように頭までクリーンにはなれない。

どんなに見た目はかわりなくても、依舞稀の頭の中は遥翔のことでいっぱいだった。

どれだけ考えても出ない答えは、もう実際に顔を見て決めるしかないのだろう。

依舞稀はデスクに戻ると恐ろしいスピードで企画書を描き上げた。

まるで明日など来ないかのように。

そろそろ副社長室に行かねばならない時間になる。

重い腰を上げて、判子を忍ばせたペンケースを取り出した時、フロアの入り口で八神の姿を見つけた。

またデスクまで迎えに来られては騒ぎになって迷惑だ。

依舞稀は慌てて席を立ち、八神の前を擦り抜けてエレベーターホールへと向かう。

「約束はちゃんと守ります。こんなところまで迎えに来ないでください」

少し距離を空けて依舞稀の後ろに立った八神に向かって、依舞稀は少し怒りの感情を露わにしてしまった。

「それは失礼しました」

依舞稀の怒りなどなんとも思ってないというように、八神は不敵な笑みを見せながら感情のこもっていない謝罪をした。

開いたエレベーターに二人で乗り込むと、一気に最上階へ着き副社長室前に到着した。

もう逃げも隠れもできない。

依舞稀は大きく深呼吸をして扉をノックした。
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