出逢いがしらに恋をして
 ふと、目を上げると、企画書を読み終えた宮沢さんがわたしを見ていた。

 向かいの椅子に座って、楽しそうな表情を浮かべて。

「美味しい?」

「はい! もう元気復活しました」

「この前、ケーキを食べてたときのきみの顔が忘れられなかったんだ。
やっと、また見られた」

 ん? 今、なんか、くすぐったくなるようなこと言われたような……気のせい?

 彼のまなざしはいつもよりさらにあたたかく、
まるでブランケットに包み込まれているような気分にさせてくれる。

 カタンと椅子が音をたてた。  

 彼が立ち上がって、わたしの前に立った。

 わたしはびくっと反応してしまう。

 これじゃ、意識してるのバレバレ。

 変に思われたかな。
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