レーセル帝国物語 皇女リディアはタメグチ近衛兵に恋しています。
「リディア様,お待たせして申し訳ありません。――おや,デニスどのもご一緒だったのですね」
数分待ったところへ,カルロスがやって来た。彼も酒には弱いらしく,素面(シラフ)である。
「いいえ,わざわざおいで下さってありがとうございます。彼も同席させて頂きますが,よろしいですか?」
「はい,私は構いませんが……。それで,伯父には内密の話というのは?」
どこで誰が聞いているか分からないため,カルロスは声を潜めて訊ねた。
「ええ。それは他でもないあなたの伯父上,サルディーノ様のことです」
これから告げることは,彼にとっては残酷(ざんこく)な内容かもしれない。それでも,スラバット王国の未来を思えばこそ,告げなければならないと,リディアは腹を(くく)った。
< 170 / 268 >

この作品をシェア

pagetop