レーセル帝国物語 皇女リディアはタメグチ近衛兵に恋しています。
そして,その要人が帝国の実権を掌握(しょうあく)するために,皇帝父娘の命を狙っているらしいという妙な緊張感が,一行(いっこう)を支配していた。
一行の中でも一番ピリピリしていたのは,デニスを始めとする近衛軍団である。サルディーノが直接手を下す可能性は低いため,必ず町のどこかに刺客を紛れ込ませているはずだ。――そう思い,彼らは行く先々(さきざき)で目を光らせていた。
そろそろ夕暮れが近い。けれど,ここにきてまだ,サルディーノ側に動きはない。
(彼が何か企んでいると思ったのは,ただの思い過ごしだったのかしら……?)
リディアの頭を,そんな考えがよぎったその時――。
何か,キラリと光るものが彼女の視界に入った。その次の瞬間。
「リディア,危ない!」
(え……!?)
リディアを抱きかかえるようにして庇ったデニスが,右腕を押さえてうずくまる。その腕からは流血しており,彼女の後ろにある木には,小ぶりの短剣が刺さっている。
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