レーセル帝国物語 皇女リディアはタメグチ近衛兵に恋しています。
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……それから一ヶ月後。
カーン!キーン!
レーセル城裏の一画で,リディアとデニスが剣を交える度に,金属音が鳴り響く。他に聞こえるのは,二人の激しい息遣いのみ。
――そして。
カキーーーーンッ!
リディアの剣が,デニスの手にしていた剣を弾き飛ばした。剣はそのままくるくる回転し,土の地面に突き刺さる。
「リディア,参った!降参だ」
丸腰になったデニスが,白旗を揚げた。息を切らしながら,リディアは剣を鞘に収める。彼女のポニーテールが,風に揺れた。
「情けないなあ。そんなことで降参してたら,ガルシアどのに叱られるわよ」
彼女は呆れたように,半目で「師匠」を見た。ちなみに,「ガルシア」とはデニスの父の名前である。
「いやいや。リディア,お前腕上げたなぁ」
「……そう?ありがとう」
デニスに褒められ,リディアは嬉しいやら照れ臭いやら。