レーセル帝国物語 皇女リディアはタメグチ近衛兵に恋しています。
「家族が最初に手紙で知らせてきたのは,五年……くらい前ですかねえ」
リディアの質問に,おかみは首を傾げながら答える。
「まあ!そんなに前から?」
「ええ。その前から少なからず,被害はあったようですけどね。ここ一,二年は特に被害がひどいみたいです」
「なるほど……」
リディアは頷く。帝国がプレナを庇護するようになったのが,ちょうど二年前である。
国が豊かになったことで,略奪(りゃくだつ)が激しくなったのだと考えれば,辻褄(つじつま)が合う。
「実は今日,レーセル城にプレナから使者が来ていたんです。その荒くれ者達を何とかするのに,帝国軍の力を借りたい,と。――それで,おかみさんにお訊きしたいんですけれど」
「何でしょう,姫様?」
二十年も祖国を離れている一般人に訊ねてもいいものか,とリディアは迷ったが,それでも思いきって彼女に疑問をぶつけてみた。
「あの国の状況は,どれほど逼迫(ひっぱく)しているのでしょう?軍の手に負えないほどなのでしょうか?」
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