レーセル帝国物語 皇女リディアはタメグチ近衛兵に恋しています。
これは,デニスとジョンにも共通の疑問である。軍人である彼らも,そこが()に落ちないようだ。
「おかみさんが知らされている限りでいいんです。教えて頂けないでしょうか?」
その訊き方から,皇女が自分の故郷のことを本気で案じていることを感じ取ったおかみは,「分かりました」と頷いた。少し思い出しながらのように,質問に答える。
「家族からの便(たよ)りによれば,その荒くれ者達は海賊(かいぞく)らしいんですよ。ですが,あの国(プレナ)では海軍にあまり力を入れていないようで。陸軍では海賊に太刀(たち)()ちできないので,帝国の海軍に助けを求めたんだと思います」
「はあ,なるほど」
プレナという小国は,数年前までそれほど豊かな国ではなかったため,海賊など海からの侵略は想定されていなかったのだろう。そのせいで,国内の治安を守る陸軍ばかりが力を持ち,海軍は(ないがし)ろにされていたようだ。
言い方こそ悪いが,平和ボケしていた小国がレーセル(大国)の庇護を受けて豊かになったところへ,海賊が侵略してきた。対処方法が分からない小国の王は,世界一の規模を(ほこ)る海軍を有するレーセルに助けを求めることにしたというところか。
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