レーセル帝国物語 皇女リディアはタメグチ近衛兵に恋しています。
「うわ,ヤベえ……」
デニスが顔をしかめた。誘ったのは彼ではなくリディアの方なのに,頭から怒られるのは自分だと思い込んでいるようだ。
(まあ,ジョンがわたしのこと,怒れるわけないものね)
(くさ)っても(いや,腐ってはいないが),リディアは姫である。彼らの主である。生真面目なジョンのことだから,「姫様を怒るなんて(おそ)れ多い」とでも思って遠慮しているのだろう。
悪いのは自分なのに……と思うと,リディアはチクリと心が痛む。ので。
「ごっ,ゴメンなさい,ジョン。余計な心配をかけてしまって」
彼女は先手を打って(?),自分からジョンに謝った。するとやっぱり。
「デニス!どうせまた,お前がリディア様を誘い出したんだろう?姫様に謝らせるなんてどういうつもりだ!」
リディアの謝罪などまるで無視して,頭ごなしにデニス一人を責め立てている。
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