俺様専務に目をつけられました。

7.

海外事業部のアシスタントは木・金の二日間で終わったのだが、その後の私の仕事に変化があった。その一、アシスタントの方々がお休みでなくても時々海外事業部の助っ人として呼ばれる。これは総務部の人間は今までも他部署に助っ人としていく事があったから、まあ分からなくもない。

しかし、これだ、これ!

私の手元には今、ペンと紙があるのだがこれを専務室まで届けなければならないのだ。絶対に今早急に必要のない物だと思う。それに普通、役員への備品のお届けは秘書課に持って行くか秘書が取りに来るかだ。
こんな専務室へのお届け物の用事が、ここ最近週に二回は最低あるのだ。私以外の者が行こうかと手を挙げても『三栗さん』とご指名らしく逃げようがない。おかげで同じ総務課内だけでなく秘書課の皆様からの目線が痛い。


トントン

「総務の三栗です。」

「どうぞ。」

部屋の中から専務の専属秘書である高杉さんの返事が聞こえドアを開け中に入った。室内では入口のすぐそばのデスクで高杉さんがPC作業をしていて、専務は奥の自分のデスクで書類の確認をしているようだった。

「お届け物、こちらで間違いないですか?」

高杉さんに確認してもらい一時でも早くこの部屋を立ち去ろうと思っていたのに、

「こっちに持ってきてくれ。」

専務の一言でその思惑は消された。仕方なく専務のデスクまで持って行き確認を取る。

「悪いな、これを読んだら確認するからそこに座って待っていてくれ。」

目線だけで目の前のソファーに座って待っていろと言う。
いやいや、ペンと紙だけですよ?書類じゃあるまいしチラッと見るだけでOKじゃない?てか、早くこの部屋から立ち去りたい。専務の机にペンと紙を置いた。

「すみません、後の用もありますので間違っていればご連絡下さい。手の空いている者に届けさせますので。では、失礼致します。」

早口でそう伝え高杉さんにも軽くお辞儀をし逃げるように部屋を出た。後ろから『おい!』と聞こえたが無視である。後で何か言われても『急いでいたので気づきませんでした。』でいいだろう。
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