俺様専務に目をつけられました。
途中、淡路サービスエリアで休憩をとりに寄ったんだが、車の中では機嫌がよかった専務の機嫌が急に悪くなった。機嫌が悪いと言うより拗ねているの方が正しいような。

「どうしたんですか?何か私、不愉快な事しましたか?」

わけがわからないのでド・ストレートに聞いてみた。

「・・・した。」

答えにくそうに答えた専務。しかし全く原因が思い当たらない。
サービスエリアに着いてトイレを済ませ、一緒にお土産屋さんを覗いて、飲み物を買って・・・、そして今外のベンチで休憩中。

「お前、俺の名前呼ぶの避けてるやろ。」

原因が思いつかない私にしびれを切らしたのか専務の方から正解を言ってくれた。

あっ、バレてた。

そう、『東郷さん』を却下され残すところは『享祐さん』か『享祐』しか選択肢は無くなった。でもどうしても『享祐さん』と呼べない。だから今日はいつもなら『専務〇〇します?』って感じで言ってたのを『〇〇します?』と名前の呼びかけを省略していたのだ。

そこに気づくとは。めんどいなー。
しかし、なんて呼ぼう。やっぱり・・・。


あっ!!


「享くん、それできげん悪かったんですか?私もっと他に何かしたかと思って考え込んだじゃないですか。」

「きょ!きょ!」

専務が『享くん』と呼ばれ驚きで目を見開いたまま固まってる。たぶん『享祐さん』って言われると思ってたんだろう。でも私のイメージじゃないのよね『享祐さん』って。

うろたえる専務が可愛くってもう一度言ってみた。

「ダメですか?享くんって呼ぶの。」

「いや、いい。」

そう言った専務の耳は赤かった。
やった!何に勝ったかは分からないが勝者になったようで気分がいい。
その日は私が『享くん』って呼ぶたびに一瞬だけ専務の行動が止まるのが可愛くて、わざと何回も名前を呼んだ。

「お前、わざと名前呼んでないか?」

バレた。

「ダメ?享くん。」

あっ、そっぽを向いた。ホント今日は専務が可愛い。相変わらず上から目線の俺様専務だけど、慣れて来たのか一緒にいる事が苦痛でなくなってきた。
毒されてきたかな・・・。
< 29 / 91 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop