俺様専務に目をつけられました。
その後も四月に開催される欧州フェアの調整で海外事業部と共に忙しい毎日を送りながら晴香に会えない日々が続いた。

「なあ、圭吾。年末の二十二日以来会えないってどう思う?なんとか調整してくれ。」

「まあ忙しいのは確かだが、週末まで予定を入れられるのは確実に社長の思惑だろうな。」

「親父は本気で政略結婚させる気か?あーっ!それに佐伯との変な噂もあるし、くそっ!」

珍しく圭吾に愚痴をこぼした。



その週末の金曜、

「享祐、土日休みになったぞ。ついでに城崎の旅館に予約を入れといてやったから二人で行ってこい。」

「週末は会合が入ってなかったか?」

「ああ、あれな。お前を週末縛り付けるため、こっちに回ってきたやつだから元に戻してやった。これ以上詰め込むとクーデター起こしても知りませんよって言ったらすんなり聞いてくれたぞ。まあお前=俺も仕事だからな、俺もこのままの状態なら考えさせて頂きますって言っといた。」

さすが俺の親友を何年もしてるだけあって凄いな、圭吾。社長直々でなくても社長秘書と秘書課部長相手に・・・。



圭吾がもぎ取ってくれた休暇でやっと晴香に会えた。
やって来た城崎温泉、チェックインまで町中を散策している時に先手を打った。

「外湯、今日は行かないからな。」

「えっ、行かないんですか?」

少し大人げないと思ったが、やっと晴香と二人っきりの時間を過ごせるんだ。別々に入る風呂をめぐっている時間があるなら部屋でゆっくりしたい。温泉に入りたければ部屋に露天風呂が付いてるからそこに入ればいい。温泉を楽しみにしていた晴香には悪いが今回は我慢してもらおう。

最初は外湯めぐりができずに残念がっていた晴香だが、部屋の露天風呂も夕食も満足だったらしく終始ニコニコとご機嫌だった。
帰りも十一時のチェックアウトぎりぎりまで部屋で二人のんびりと過ごし、溜まっていた疲れも吹き飛んだ。
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