夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】
アカリがメッセージを読む少し前ーー。
今日は、アランとアカリさんの結婚式。
集合時間までにはまだだいぶあるけど、早く目が覚めてしまった僕は自宅で式に出席する為の身支度を整えていた。
……いや。正確に言うと、"早く目覚めてしまった"ではなく、"眠れなくなってしまった"という方が正しいかも知れない。
ワインを試飲して会議室で倒れたあの日から、僕は飲食をするのも、睡眠するのも……。何をするにも、常に恐怖が付き纏うようになってしまった。
これを口にしたら、また同じ事になるかも知れない。
眠ってたら、そのままもう目が覚める事はないかも知れない。
誰かと一緒に居るのも怖いけど、夜ベッドで独りシンッとした部屋の中に居るのも怖くて……。冷えて縮こまった心が、ガタガタ震えて眠れなかった。
「……酷い表情。
行くの、やめようかな……」
部屋にある鏡で自分の顔を見ると、やつれてるし、クマも酷い、とても結婚式のようなお祝いの席に出席が許される顔ではない。
けれど、親族として、アランの兄として、参加しない訳にはいかない事は分かっている。