夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】
ーーコンコンッ。
「!……はい」
それはネクタイを締め、身支度がほぼ整った時だった。部屋に響いた、静かで控えめなノックの音。
返事をして扉を開けると、そこに居たのはミネアさん。
「ミネア、さん?
……起き上がって、大丈夫なんですか?」
「……」
微笑んで尋ねると、僕のその表情を見て彼女は俯いた。
そのなんだか苦しそうな姿が、つわりで具合が悪いいつもの様子と少し違うと思いつつも、僕は気遣い声を掛ける。
「お見送りは大丈夫ですよ?
……さ、部屋に戻って休んでいて下さい」
「っ、……ごめんなさいッ」
「え?……っ」
"ごめんなさい"
予想もしていなかった涙まじりの言葉に驚いた。
……けど。
本当の驚きは、これから。
ミネアさんが僕に差し出した一冊の本と、その上に置かれた四角い箱。
それが自分にとっての"何"なのかを知った瞬間、僕は予想もしていなかった新しい運命の扉を潜る事になんだ。