夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】
そんな自分が今更、許されるものか?
彼女の元に……。家族の元に帰っても、いいのか?
こんな俺を、今も待っていてくれているんだろうか?
そんな疑問が浮かんで、今いる場から大事な一歩を踏み出す事に躊躇する俺。
その時。震える手から箱がすり落ちて、中に入っていた写真が宙を舞った。写真はヒラヒラとゆっくり落ちていき、裏面を見せて床に舞い落ちる。その、本来なら何の印刷もされていない真っ白の裏面には……。
「!……っ、え?」
記憶を失くす前の俺からの、今の俺へのメッセージ。
『過去の自分にも、未来の自分にも、言いたい事は変わらない。
"お前には、将来優しい奥さんと可愛い子供が家族になってくれて。
大切な人や大好きな人がたくさん出来て、必ず心の底から幸せだって笑える日がくる。
だから、何も心配せず、そのままのお前でいていいよ。"』
俺が、俺に言っていた。
ーーーそのままのお前で、いていいよーーー
そのメッセージを見た瞬間。
自分の中でつかえていた物が一気に、なくなっていくように感じた。
ずっと弱かった俺。
弱いから自分に自信がなくて、何も信じる事が出来なかった。
今いる場所から、抜け出す事が出来なかった。
でも、ようやく俺は俺自身を信じる事が出来のだ。
そのままでいいのだ、と……。
すると、まるで生まれ変わったかのように、心が軽い。
自らを受け入れられたら、もう何も怖くない。
迷いなんて消える。
アカリは今も、俺を待っていてくれている!
そう確信して床から拾った写真をもう一度見つめると、自然と笑みが溢れて……。暖かい涙が頬をつたり落ちていた。