夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】
そんな俺に、ミネアが言う。
「……。
目覚めた、みたいね。さぁ、行って」
笑顔で、俺を送り出そうとしてくれていた。
「安心して?……婚姻届は、提出していないから」
「!っ……」
「わたくし達は、他人よ?
戸籍上も、そして今から……全くの他人」
そう言って、一緒に住む際に提出したと思われていた婚姻届を自分の上着ポケットから取り出すと、俺の目の前で破り捨てた。
俺とミネアの間で舞い落ちる紙吹雪。
「……さようなら。もう、迷ってはダメよ?」
その瞬間のミネアの笑顔が、記憶を失って初めて彼女に会った時の光景を思い浮かばせる。
そして、あの時の気持ちも……。
「ーーありがとう」
「!っ……え?」
"ありがとう"と、一礼した俺にミネアが驚く。
彼女が一体どんな言葉や態度で俺との最後を想像していたのかは分からないが、俺にはそれ以外の言葉が見つからなかった。
一緒に過ごしていた長い時間、今日まで色々な事があった。
悲しかったり、辛かったりした事がなかった訳じゃない。……けど。