夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】
その女性を見て"まさか"と思う。
だって、年齢がオレとさほど変わらないように見える大人の女性。目の前の女性と、今オレがまさかと思い浮かべている人物が本当に同一人物ならば、年齢はもう70歳に近い筈だ。
こんな事があるのか?
シャルマ様から兄上の母親の素性を聞いていなかったオレは、信じられない気持ちでいっぱいだった。
これは夢か幻か?、そう心の中で問いただした瞬間。
「信じられない、わよね?」
「!っ……」
「そう、これは夢か幻……。この場で起きた事、私を見た事。そう思って、忘れてくれたら有り難いわ」
心の中を覗かれたかのような言葉にドキッとする。
自分の目の前で、今起きている事の全てに混乱して、もう何にも縛られておらず自由な筈なのに身体動かない。
すると、もう永久に目を覚ます事がなくなったシャルマ様の傍に居たディアスが立ち上がり口を開いた。
「アンナ様、急ぎましょう」
!!っ……アンナーー。
まさか、とは思ってはいたのに、やはりその名を聞いて受けた衝撃はかなりのものだった。
雷に打たれたら、こんな感じなのだろうか?
身体の中心にある胸……。いや、心の奥がギュッと締め付けられて痛くて、ビリビリするように身体が小刻みに震える。