夢の言葉と約束の翼（下）【夢の言葉続編⑦】

「無事に帰って来てくれて良かった」

「っ……」

「おかえりなさい。……お疲れ様でした、ヴァロン」

「っ……、っ……シュウ」

昔仕事から帰って来た俺にしてくれたように、シュウが言った。
懐かしい温もりと言葉に俺の口から名前が溢れると、背中を心地良いテンポでポンッポンッと叩いてくれる。

すると、足りなかった"何か"が心にカチッとハマッたように暖かくなったーー。

その直後。フワッと吹く春風に乗って桜の花びらが俺とシュウの周りにヒラヒラと降り注ぐ。

「！っ……お、おい！待てよッ、少し早いッーー……」

「えっ？？」

俺が慌てて木の方を向いて声を上げると、シュウは頭に？マークを浮かべて首を傾げる。

実はさっき、能力(ちから)を使って桜の木にお願いした。
"今日は特別な日だから、大切な人が来たら花を咲かせてくれないか？"って……。
まだ咲くには少し早い時期だからお願いしたんだけど、どうやら桜の木達は"大切な人"を勘違いしてしまったようだ。

……、……いや。勘違いじゃ、ねぇか。

桜の花びらを浴びるシュウを見て、俺はそう思った。