夢の言葉と約束の翼(下)【夢の言葉続編⑦】

「実は父が倒れたと連絡があり、これから向かおうと思っていたのです!」

「!……なにっ?お父上が?!」

「命に別状はない、と電話で母は言っておりましたが心配で……。
アラン様にも直接お伝えしなければ、と思ったのですが、使用人長が許可を下さったので、すぐに向かおうと……」

オレの手を握るスズカの手が、震えていた。

この邸の使用人にはオレが父上から引き継いだ際に設けた厳しい制度で、休みはあるが連休や遠くへの外出は許可してこなかった。
だが、アカリ様がこの邸に滞在していた期間の間に彼女がその制度を変えた事により使用人には自由が増え、またその際の許可を降ろすのもオレではなく使用人長であるエルナが下せる事となっていた。

その事を思い出して、オレはスズカが出て行こうとしたのではなく、一時的な里帰りだと知りホッとした。
そして、今彼女が普通を装っているが、父を想いものすごく心配で不安なのだと悟る。
それなのに、スズカはオレに必死で、オレへの想いを伝えようとしてくれていた。
< 326 / 338 >

この作品をシェア

pagetop