諦めて結婚いたしましょう~一途な御曹司の抑えられない独占欲~
「なんのことですか?」

 堪らず問い掛けた。

 しかし、この状況が、あの夜の出来事を思い起こさせた。まるで私が迫ったあのときと、立場が逆になったようだった。

「……もしかして、この前の話をしてるんですか?」

 私が言うと、理人さんは突然私の唇に唇を重ねる。彼の思いもよらぬ行動に、私は一瞬、思考と呼吸が同時に停止した。

 どれくらいの時間だろう。しばらく重なり合っていた唇が、ふいに離れていく。

 視界の先で理人さんの長いまつ毛が揺れているのが見えた。

「お前だけがドキドキすると思うなよ。馬鹿」

 言い終えた彼は、私の横に倒れ込んだ。
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