諦めて結婚いたしましょう~一途な御曹司の抑えられない独占欲~
 * * *

「いつまで混ぜるんだ」

 無意識にホットコーヒーの入ったカップをかき混ぜ続けていた私は、理人さんに声を掛けられてはっとした。

「す、すみません」

 慌ててスプーンをソーサーに置き、カップに口をつける。

 私たちは、美術館にて期間限定で行われている、西洋絵画に特化した世界屈指の美術館【ロンドン・ナショナル・ギャラリー】の展覧会に行った帰り、近くにあったカフェでお茶をしていた。

 今日はクリスマス。ここにも恋人同士であろう男女が何組か見受けられる中、私たちも紛れるように特別に装飾された店内で穏やかな時間を過ごしていた。

 ひと息ついて、ついぼーっとしちゃったんだ。

 私がカップから視線だけを上げる。すると、机に頬杖をついた理人さんが、じっとこちらを凝視していた。
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