諦めて結婚いたしましょう~一途な御曹司の抑えられない独占欲~
「ありがとう」

 私が笑みをこぼすと、美鶴は一瞬口をへの字にしてから、「とりあえずいっぱい食べな!」ともともとピザが入っていた取り皿に、もうひと切れピザを乗せる。

「こんなに食べられないってば」

 慌てて告げるけれど、彼女は「おいしいものを食べると幸せになれるのよ」とはつらつと宣言した。

「だからって」と肩を揺すって笑う私を見て、美鶴は安堵したように目尻を下げる。

 美鶴には心配ばかりかけていて、少し心苦しい。いつか良い報告ができるように頑張らなきゃ。ここからが本当のスタートよね。

 自分で自分を奮起した。

 そもそも私が理人さんの婚約者としてそばにいられているのも、奇跡のようなものなのだ。

 吾妻グループの跡継ぎという立場なら、肩書だけでも結婚したい人はいくらでもいる。加えて理人さんのあのルックスに、彼の本質を知れば、皆たとえ彼が吾妻の人間でなくとも好きになるはずだ。
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