諦めて結婚いたしましょう~一途な御曹司の抑えられない独占欲~
 私の父と理人さんの父が懇意にしていたおかげで私たちの婚約が決まったと聞いたけれど、そうじゃなければ、私が選ばれていた可能性はとても低かったと思う。

 理人さんが言っていたように、私はあの家に生まれた運命を切り離せない。こうして彼に出会えた奇跡になによりも感謝しているからだ。

「やっぱり私、幸せだな」

 そう呟いた私に、美鶴がきょとんとした顔つきになる。

「ごめん。なにもない」

 肩を竦め誤魔化す私は、食事を再開した。

 好きな人がいて、直接気持ちを伝えられる。それが改めて幸福だと実感した。
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