嘘恋のち真実愛
部屋を出るとき、征巳さんが手を差し出したので、その手に自分の手を乗せた。手を繋ぐのも今日が最後。

私の歩幅に合わせて歩いてくれる彼の横顔をこっそりと窺いみる。


「ゆりか、なに?」

「えっ? あ……」


こっそりと見たつもりなのに、しっかりとばれていた。用があって見たのではない、ただ見たくて見ただけ。

でも。そんな理由を言えない。言ったら、何で見たくなったのかと聞かれるだろうから。


「髪にゴミが……」

「ゴミ? 取って」

「あ、落ちたみたいで、なくなりました。ハハハ……」


苦し紛れな言い訳がバレバレだったのか、征巳さんはため息をついた。


「もっとゆりかと暮らしたいのに、今日が最後だなんて寂しすぎる」

「えっ?」

「それに、今日は疲れるだろうから、癒したいのにな」

「どんなふうに癒そうと考えていたんですか?」


彼が言うようにおそらく今日は疲れそうだろう。癒してもらえるならお願いしたくなるけれど、どんな内容かにもよる。

彼は私を横目で見てから、エレベーターの表示に目を向けた。返事はラウンジに着くまでお預けだった。
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