嘘恋のち真実愛
彼は、一刻も早くに入籍して、一緒に暮らしたいらしい。けれど、結婚はふたりだけの問題ではない。

先に退社した私は、『Kenアイランド』に行く。マスターが安心した笑顔で迎えてくれた。


「ゆりかちゃん、やっと来たね」

「やっと?」

「二週間くらいかな……彼氏は毎晩来てたよ。いつもボーッとしていて、そこのドアが開くとばっと見るけど、すぐがっかりしていてね……喧嘩してた?」

「毎晩? ううん、喧嘩してはいないけど……」


もしかして、征巳さんは私が来るのを待っていたのだろうか?

おしぼりで手を拭きながら、彼が毎晩ここに来ていた理由を考えた。


「ゆりかさん、いらっしゃいませ。今日はきっと彼氏さん、大喜びしますね」

「市原くん、久しぶりね」


厨房から出てきた市原くんまで、征巳さんのことを言う。征巳さんはどんなふうにここで過ごしていたのだろう。

寂しかったと言っていたけど、オフィスでは顔を合わせていたのにな。


「おっ、来ましたよ。いらっしゃいませー」


メニューを見ていると、征巳さんが到着した。彼は私と目が合うなり、目尻を下げた。
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