嘘恋のち真実愛
私たちが謝ると、あちこちで笑い声が聞こえてきた。今度はなんだろう? なぜ笑うのか? と征巳さんと顔を合わせて、首を捻る。


「部長、今日は奥さんが近くにいるのですから、しっかりしてくださいよ」
「そうそう、昨日みたいに用もないのにうろうろしたり、いきなりテンションを下げたりしないでくださいね」


征巳さんが私に気にしないでといいながらも、私に知られることを恐れていた昨日の彼の様子を早速暴露される。

征巳さんは額に手を当てて、頭を上に向かせた。気まずそうにする彼を見て、私は顔を緩ませる。

それから、彼の背中を叩いた。


「部長、気を引きしめてくださいね」

「わかってるよ、芦田さん」


結婚しても私は社内で旧姓を名乗り、お互い『部長』『芦田さん』と呼びあうことに決めている。

周囲の人に余計な気を使わないためと、仕事とプライベートをきっちり区別するためだ。だから、昨日の征巳さんはダメダメだった。

私が体調を崩されなければ、いつもの彼でいられただろうけど……。
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