嘘恋のち真実愛
いきなりのプロポーズしてくる宣言に、征巳さんが飲んでいたコーヒーを「ゴホッ」と吹き出した。私は、バッグから急いでハンカチを取り出す。


「ま、征巳さん! 大丈夫ですか?」

「ああ、うん……ありがとう」


ハンカチを差し出して背中をさすると、彼は苦しそうにしながらも笑った。それを見て、私も笑う。

店長はつくづく楽しい人だと思う。うざい人でもあるけれど……憎めない人だから私たちはここに来たくなるのだ。

店内にいた他のお客さんも、店長をあたたかな目で見ていた。常連客のひとりが、立ち上がって「がんばれ!」と声援を送る。

ハイテンションの店長は「おう!」と、今すぐ出て行こうとしたけれど、征巳さんがそれを止めた。

止められた店長は苦々しい顔で、征巳さんをとがめる。


「なんで止めるんだよ?」

「勢いでプロポーズしても、良い結果が出るとは限らない。どちらもバツイチなんでしょ? 相手は慎重になると思うから、しっかり準備して行くべきじゃないかな?」


店長は神妙な面持ちで、征巳さんの説得に耳を傾けた。興奮状態で顔を赤くしていたけれど、なにかを考えるように目線をあげる。
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