嘘恋のち真実愛
好きだと思い込む……部長を好きなら、自然と婚約者らしい対応ができるかもしれない。


「難しく考えなくていい。ゆりかが俺を好きになるようにがんばるから」


私はまたもや「えっ?」と返す。部長ががんばる?


「覚悟して。ドキドキさせて、意識してもらうようにするから」

「ええっ!」


動揺する私を部長は笑って、「行こう」と歩きだす。心なしか軽い足取りに見える彼に合わせて、私も歩みを進ませた。

地下鉄でスカイツリーまで行く。展望室に行くには、チケットが必要。チケット売り場に並ぶかと思っていたら、部長は違う方向に足を動かす。

予約券入り口からWebチケット引換の機械を操作し、手際よくチケットを発券した。そのうちの1枚を「はい」と私に渡す。


「ありがとうございます。もしかして、昨日予約してくれたのですか?」

「うん、スムーズに入れるほうがいいからね」

「さすがです」

「ゆりかに褒めてもらえるとうれしいね」


満面の笑顔を向けられて、答えに困った。褒めたつもりはなく、感心しただけなのに。
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