嘘恋のち真実愛
上昇するエレベーター内でも手を繋いだままでいる私たちは、本物の恋人同士に見えるかな。

エレベーターが春夏秋冬の四基に分かれていることを初めて知り、内装の素晴らしさにふたりで感動した。


「わあ、すごい」

「うん、きれいだね」


一分もかからないで、350メートルの高さに到着。私たちはところどころのガラスに寄って、東京の景色を様々な方向から眺めた。


「やっぱり高いな」

「そうですね。あ、あの辺が私たちが住んでいるところですよね?」

「うん、そうだね。マンション、見えるかな?」

「うちのマンションよりも部長のマンションのほうがきっと……」

「ゆりか」


『分かりやすい』と続けるつもりだったけど、遮られた。名前を呼ばれたから「はい?」と返事をする。

部長は私の耳元に顔を寄せた。


「デートで部長はないよね? 名前で呼んで」

「名前……征巳さん?」

「うん。呼び捨てにしてくれてもいいよ」

「そこまでは無理です」


確かに婚約者なのに、『部長』呼びはおかしい。でも、呼び捨てするほど、まだ親密になっていない。
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