嘘恋のち真実愛
だから、さん付けで呼ぶことにした。それに、呼び捨てしなくても問題はないだろう。

床がガラス張りになっている部分で、私は足がすくませる。こ、怖い……。思わず繋いでいる手に力が入った。


「ん? ゆりか、高所恐怖症?」

「じゃないけど、これは怖いです」

「大丈夫だよ。俺がついているから」

「……ちょっ!……」


繋いでいる手をあげた部長は、その手を自分の口に持っていき、私の手の甲に触れた。突然のことにビックリして、手を放そうとする。

だけど、放れない。


「ダメだよ。ずっと繋いだままでいないと」

「なんで……そんなことをするんですか?」

「そんなこと? ああ、キス? ゆりかを安心させるためにしたんだけど」

「安心するどころか……余計ドキドキしましたよ」


必死で抗議をする私を部長は、楽しそうに笑う。なんで、笑うの?

ちょっとムッとしながら、部長の手を引いてガラス張りの床から離れた。彼はまだ笑っている。


「早速ドキドキしてくれて、よかった。なんとなくゆりかの攻略法が見えてきたよ」

「は? 攻略法? なんですか、それ……」

「楽しいね。ゆりかも楽しんでね」
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