嘘恋のち真実愛
楽しむ余裕なんてないけど、楽しみたい気持ちはある。

ぐるりと一周してから、またエレベーターに乗り、さらに100メートル高い天空回廊へ行く。通路が下の展望室よりも狭いから、ガラスが近くて、空中に浮いているような感覚になった。

これは、さっきよりも怖いかも。


「征巳さん……離れないでくださいね」


今頼れるものは、部長しかいない。少々不本意ではあるけれど、彼に支えてもらいたくなった。


「もちろん離さない」


しかし、離さないと言う彼は私の手を放した。待ってと、彼の手をもう一度握るために私は追おうとしたが、動きを固める。

後ろから抱きしめられたからだ。


「えっ?」

「より密着したほうが、さらに安心できるでしょ?」

「えっ、いえ……あの、そんなふうにくっつかれても……困ります。あ、歩きにくいし」


私の心臓は今日一番の最高速度で動く。ドキドキ、ドキドキ、ドキドキ! 止まらない……。


「焦るゆりか、かわいい」

「もう……ダメ……」


心臓の動きの速度が高くなるのと同時に、顔は急速に熱くなっていた。オーバーヒートしそうになる。やばい……。
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